中小企業のAI人材育成で失敗しやすいのは、「詳しい人を一人作ればよい」と考えることだ。AIは営業、経理、総務、製造、管理の流れをまたぐ。だから一人の担当者だけが詳しくても、周囲が分からなければ業務は止まる。
01Day 0-14:現状把握
最初の2週間は、研修を始める前に棚卸しをする。誰が生成AIを触ったことがあるか。どの業務で文章、表、要約、分類、検索をしているか。どの情報はAIに入れてはいけないか。ここを確認しないまま研修を始めると、学んだ内容が実務とつながらない。
使ったことがある、聞いたことだけある、まったく知らない、の3段階で十分。
メール、資料、データ整理、議事録、問い合わせ対応など、繰り返し作業を洗い出す。
個人情報、未公開価格、契約条件、人事評価などを最初に線引きする。
02Day 15-45:3層別研修
全員に同じ高度な研修をする必要はない。30名規模なら、3層に分けると回しやすい。全社員はリテラシー、実務担当者は日常業務、管理職は設計を学ぶ。
リテラシー層は「AIは間違える」「機密情報を入れない」「最後は人間が確認する」を理解すればよい。実務層は、自分の業務で使う型を3つ作る。設計層は、承認条件と例外処理を決める。
03Day 46-75:1業務で実装訓練
研修だけでは定着しない。必ず1つの業務を選んで、AIを使う流れを実装する。おすすめは、問い合わせメールの分類、議事録要約、見積依頼の情報整理のどれかである。
この期間は「成功事例発表会」より「失敗共有会」が効く。AIが誤った分類をした。丁寧すぎて使えない文章が出た。数字を取り違えた。こうした失敗を責めずに集めることで、会社のルールが具体的になる。
04Day 76-90:定着判定
最後の15日は、研修の成果を「受講したか」ではなく「業務で使われているか」で判定する。見るべき指標は、AI利用回数ではない。確認時間が短くなったか、手戻りが減ったか、担当者以外も同じ型を使えたかである。
05専任講師なしで回す
中小企業では、外部講師を毎月呼ぶ余裕がないことも多い。だからこそ、社内に「AI先生」を作るのではなく、各部署に小さなロールモデルを置く。営業ならメール下書き、経理なら請求書確認、総務なら社内文書作成というように、部署ごとに一つの使い方を持たせる。
経営者は、そのロールモデルを評価し、時間を確保し、失敗を責めない方針を示す。ここを曖昧にすると、社員はAIを使うこと自体をリスクと感じてしまう。
06Vol.04への接続
90日プログラムの成否は、社員のやる気だけで決まらない。業務時間内に学ぶことを認めるか。失敗を改善材料として扱うか。評価に反映するか。これらは経営者が決める。
つまり、AI人材育成の最後に残る問いは、経営者自身の学び直しである。Vol.04では、経営者が何を学び、何を手放すべきかを扱う。
