AI時代の読書で大切なのは、流行語を追いかけることではない。自社の仕事、人の育ち方、経営者の判断を見直すための言葉を得ることである。今月は、AIを使う個人、技術を受け止める社会、変化を率いるリーダーという3つの角度から選んだ。
01『Co-Intelligence』Ethan Mollick
生成AIを「魔法」でも「脅威」でもなく、仕事と学習の相棒として扱うための本である。AI初心者の経営者にとって読みやすいのは、著者が抽象論だけでなく、実際にAIとどう向き合うかを繰り返し述べている点だ。
Vol.03の文脈で読むなら、ポイントは「AIを使える人」ではなく「AIと一緒に考えられる人」が重要になるという点である。社員教育を考える経営者は、AIスキルを資格のように扱う前に、日々の仕事で試し、失敗し、修正する文化をどう作るかを考えたい。
02『Power and Progress』Daron Acemoglu / Simon Johnson
技術の進歩が自動的に人を豊かにするわけではない、という視点を与えてくれる本である。AI導入を「便利になるから進める」で終わらせず、誰の仕事が変わり、誰が利益を得て、誰が置き去りになるのかを考える助けになる。
中小企業では、AI導入が社員の不安につながることがある。だからこそ、効率化だけを語るのではなく、AIで浮いた時間を何に使うのか、社員の学習機会をどう守るのか、評価制度をどう変えるのかを同時に考える必要がある。
03『The Practice of Adaptive Leadership』Ronald Heifetz / Alexander Grashow / Marty Linsky
3冊目は、Vol.04への橋渡しとして選んだ。AIの本ではない。しかし、AI時代の経営者に必要な本である。なぜなら、AI導入の難しさはツール操作ではなく、人が慣れた働き方を変えるところにあるからだ。
適応型リーダーシップの考え方は、正解を配るリーダーではなく、組織が自分で学び直す場を作るリーダーを求める。AI導入も同じである。経営者が「AIを使え」と命令するだけでは足りない。何をやめ、何を試し、どの失敗を許容するかを決める必要がある。
04今月の読み方
まず『Co-Intelligence』で、AIと働く感覚をつかむ。次に『Power and Progress』で、技術を導入するだけでは人は幸せにならないという視点を持つ。最後に『The Practice of Adaptive Leadership』で、経営者自身が変化の場を作る役割を考える。
Vol.03は「人がどう変わるか」を扱った。だが、人の変化は自然には起きない。評価を変え、学習時間を確保し、失敗を改善に変える経営者の意思が必要になる。次号Vol.04では、その経営者自身の再設計に踏み込む。
